2020/06/11

憲法の基瀎知識君䞻䞻暩から囜民䞻暩ぞ【宮柀俊矩 vs. 金森埳次郎】その

シリヌズ最終回です。

、明治憲法第䞃十䞉条の憲法改正手続きに䟝るこずは、新憲法が民定憲法であるずの建前ず矛盟があるのではないか

「䞻暩が囜民に存するこずを宣蚀し、この憲法を確定する」
ず謳う䞀方、手続き面では明治憲法の条項を利甚する憲法改正ずしお行われたした。

このこずから、憲法孊的にどんな問題が具䜓的に生じおくるのかが今回の䞻題です。

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〇宮柀俊矩君   最埌に第䞃、民定憲法の建前ず、歀の床の憲法改正手続ずの関係は、どうであるかず云ふこずでありたす、歀の憲法改正草案は、囜民が之を制定するず云ふ建前、所謂民定憲法、民が定める憲法ず云ふ建前に立脚しお居りたす、歀の事は䞉月六日の詔曞でも、亊改正案の前文でも極めお明癜であるず思ふのでありたす、所で政府が歀の憲法改正案は、明治憲法第䞃十䞉条に䟝るものずしお取扱぀お居られるのでありたすが、是は民定憲法ず云ふ建前ず䜕凊迄䞡立するでありたせうか、明治憲法第䞃十䞉条は埡承知の通り、所謂民定憲法の建前は採぀お居りたせぬ、憲法改正は議䌚の議決ず、倩皇の裁可に䟝぀お成立する、ず云ふ建前を採぀お居りたす、衆議院の速蚘録に䟝れば、金森囜務倧臣は、歀の改正案は明治憲法第䞃十䞉条に䟝るものでありたすから、勿論議䌚の議決の倖に、倩皇の裁可があ぀お初めお成立する、ず説明しおいら぀しやいたすが、若しさうずすれば歀の改正は貎族院の意思に反しおも、又倩皇の意思に反しおも、成立するこずが出来ないず云ふこずになるのでありたす、明治憲法第䞃十䞉条の建前から蚀ぞば圓然さうなくおはならないのでありたす、䜵しさう云ふ建前に基く憲法改正、貎族院の意思に反しおも、亊倩皇の意思に反しおも成立するこずが出来ないず云ふ憲法改正の前文が、どうしお日本囜民は歀の憲法を確定するず宣蚀するこずが出来るのでありたせうか、
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倧日本垝囜憲法の第73条に基づいお改正を行うずいうこずは、新憲法を成立させ公垃・斜行するたでの間に、

・垝囜議䌚衆議院・貎族院の䞡院による議決
・倩皇による裁可

などが必芁ずなりたす。

普通遞挙により遞出された衆議院はずもかく、貎族院や倩皇の蚱可がなければ新憲法が成立しないのでは、「囜民が確定した憲法」民定憲法ずいう前文の建前ずは矛盟するのではないか、ずいうのが宮柀議員の指摘です。

倩皇の「裁可」ですが、倧日本垝囜憲法第条にも「倩皇ハ法埋ヲ裁可シ其ノ公垃及執行ヲ呜ス」ずの芏定がありたす。

明治憲法䞋では、垝囜議䌚が法埋案を可決するだけではダメで、倩皇による「裁可」の手続きがあっお初めお法的効力が生じるずいう仕組みになっおいたした。
実際䞊は倩皇が「裁可」を拒吊した䟋はないようですが、ずはいえ倩皇が認めないず法什が発効しないずいうのは、民定憲法の建前ず矛盟するのではずいう懞念が生じたす。

因みに珟圚の日本囜憲法をよく読むず、「前文」よりさらに前に「䞊諭」じょうゆずいう文章ず、囜務倧臣による「副眲」が付されおいお、

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朕は、日本囜民の総意に基いお、新日本建蚭の瀎が、定たるに至぀たこずを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び垝囜憲法第䞃十䞉条による垝囜議䌚の議決を経た垝囜憲法の改正を裁可し、ここにこれを公垃せしめる。

埡名 埡璜
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これが「䞊諭」ですが䞋線は筆者、やはり倩皇が「裁可」しお公垃に至ったこずがわかりたすね。

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〇宮柀俊矩君   政府の趣旚は或は歀の憲法改正は必ずしも民定憲法の建前を採るものではなくお、其の改正手続は党く明治憲法第䞃十䞉条に䟝るものだず云ふにありずも解せられたす、䜵し若しさうだずしたすれば、䜕が故に其の前文で日本囜民は歀の憲法を確定するず云ふやうな兞型的な民定憲法、䟋ぞば「アメリカ」合衆囜の憲法で甚ひられお居るやうな蚀葉ず同じ蚀葉を甚ひたのでありたせうか、歀の改正が公垃せられる堎合は、恐らく公匏什に䟝぀お倩皇が議䌚の議決を経た憲法改正を裁可するず云ふ趣旚の䞊諭か付けられるこずず思ひたすが、さう云ふ䞊諭の蚀葉ず歀の前文の蚀葉ずの間には明癜な矛盟があるのではないでせうか、
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このこずから、貎族院の議決や倩皇の裁可の法的な重みをどう考えたらよいかずいう問題が生じたす。
もし「囜民の代衚」ではない貎族院や倩皇が拒吊暩を持ち、衆議院の意志を吊定しおしたったら、民定憲法の建前は成り立たなくなるからです。

なお、宮柀議員の発蚀に出おくる「公匏什」ずは、
明治憲法䞋で、各皮法什や条玄の公垃の方匏を定めおいた勅什。明治40幎1907制定、昭和22幎1947廃止。by デゞタル倧蟞泉
その「公匏什」の第条には「垝囜憲法ノ改正ハ䞊諭ヲ附シテ之ヲ公垃ス」ずありたした。
「官報」1907幎02月01日号に「公匏什」の党文が掲茉されおいたす

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〇宮柀俊矩君   政府は明治憲法第䞃十䞉条に䟝る改正手続に斌おも、囜民の代衚者たる衆議院の議決があるから其の改正を以お日本囜民が之を確定したものず考ぞるこずが敢お䞍圓でないず解するもののやうでありたすが、明治憲法第䞃十䞉条に䟝る限り、囜民の代衚者ず考ぞるこずの出来ない貎族院や、倩皇の意思に反しおは改正は絶察に成立するこずが出来ないのでありたす、囜民の代衚者の意思のみに䟝぀おは改正は䞍可胜なのでありたす、諞囜の憲法の前文に囜民が之を制定する旚を宣蚀する䟋は極めお倚いのでありたすが、それ等は孰れも珟実に囜民の代衚者たる憲法議䌚に䟝぀お制定せられお居りたす、囜民の代衚者でない貎族院の議決ず、倩皇の裁可なくしおは成立するこずが出来ない、憲法の前文に囜民が之を制定するず曞くのは䜕ずしおも矛盟ではないかず思ひたす、
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この矛盟を解決するためには、

①民定憲法の建前に培するこの堎合、倩皇による「裁可」は䞍可胜だし、貎族院の審議暩も衆議院ず同等ずは考えられない
②明治憲法の建前に培するそうするず憲法改正案前文の囜民が憲法を確定の文蚀は事実に合わないこずになる

の二者択䞀を迫られたすが、政府はどう決着する぀もりかずいうのが番目の問いの結論です。

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〇宮柀俊矩君   歀の矛盟を解決するには囜民が憲法を制定するず云ふ建前即ち民定憲法の建前に培するか、或は明治憲法第䞃十䞉条の建前に培するか、歀の二぀以倖には途はないのではないかず思ひたす、歀の憲法改正に付お若し前の途を採るずすれば、即ち民定憲法の建前に培するずすれば、倩皇の裁可ず云ふこずは理論的には䞍甚ずなるず考ぞられたすし、又貎族院のそれに察する審議暩も衆議院のそれず同等の「り゚むト」を持぀ものではないず考ぞられなくおはならないのでありたす、若し之に反しお埌の途を採るずするならば、即ち明治憲法第䞃十䞉条の建前に培するずするならば、歀の改正は倩皇の裁可ず貎族院の議決なくしおは成立するこずが出来ないこずになりたす、其の結果日本囜民は歀の憲法を確定するず云ふ前文の蚀葉は事実に合しないこずになるず思ひたすが、歀の点に付お政府はどう埡考になるでありたせうか、以䞊䞃点に付お埡質疑申䞊げた次第でありたす
―――――

さお、ここからは金森囜務倧臣の答匁です。
最初の郚分は、宮柀議員の質疑の趣旚を倧臣なりに芁玄したもので、

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〇囜務倧臣金森埳次郎君   次に第䞃の論点ず臎したしお、今回の憲法は蚀はば民定憲法の劂くに思はれる、しお芋れば䞃十䞉条の歀の欜定的憲法の芏定を基ずしお手続を執り行ふこずは出来ないのではないか、甲ならむずすれば乙の方に矛盟をするし、乙ならむずすれば甲の面に矛盟をするのではないか、斯う云ふ埡質疑でありたした、
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問目のずきず同様、栞心郚分に぀いおはきちんず読み取ったうえで答匁に立っおいるこずがうかがわれたす。

因みに「欜定きんおい憲法」ずは君䞻が制定しお囜民に䞎える圢匏の憲法のこずで、囜民の名によっお制定する「民定憲法」ず察をなす抂念です。
もちろん明治憲法は「欜定憲法」、日本囜憲法は「民定憲法」に分類されたす。

さお答匁の続き。
こんどは日本政府の立堎考え方を説明した郚分です。

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〇囜務倧臣金森埳次郎君   それは䞀面に斌お巊様な意味は含たれお居りたす、䜕ずなれば我々は日本囜家の完党なる氞続性を信じ、其の囜法の基瀎に斌お倉぀た所はない、次第に皮々なる囜家の政治的機関が憲法に䟝぀お遷り倉぀お行くだけでありたす、斯う云ふ颚に考ぞお居りたす、埓぀お囜内法の問題ず臎したしおは、日本憲法の改正は、珟行憲法の䞃十䞉条に䟝぀お行ふべきものである、それ以倖に方法はないず考ぞお居りたす、䜵しながら囜際面に斌きたしおは「ポツダム」宣蚀を受諟臎したした結果ずしお、新たなる囜家組織を決めたす為には囜民の自由なる意思決定に䟝らなければならぬのでありたしお、蚀はば民定憲法の劂き原理を採らなければならぬのでありたす、斯くの劂く囜内法的芋地に斌きたしおは珟行憲法䞃十䞉条の手続に䟝るこずが正圓である、而しお囜際の面に斌きたしおは「ポツダム」宣蚀の内容を充実させなければならぬ、斯う云ふ䞡面の拘束を受けお居るのでありたす、歀の二぀の芁請が若しも党く䞀぀の手続に䟝぀お包容し埗られないものであるず臎したするならば、今回憲法を提出臎したした政府のやり方は意味の無いものであるず蚀はなければならぬず思ひたす、䜵しながら若しも歀の二぀の芁請が䞀぀の手続の䞭に満足せしめられお行き埗る、それが今回政府の執぀た態床であるず臎したするならば政府の態床は理由ありず蚀぀お宜からうず思ふのでありたす、私は歀の埌の解釈を採぀お考ぞお居る次第でありたす、
―――――

芁点ずしおは、

 ・囜内法䜓系に沿った手続きずしおは、明治憲法第73条に䟝るほかはない
 ・囜際的には「ポツダム宣蚀」受諟により、「民定憲法の劂き原理」「民定憲法の原理」そのものではない、を採甚せねばならない
 ・䞊蚘぀の拘束囜内事情ず囜際事情を぀の手続きで䞡立可胜か吊かが問題なのだが、政府ずしおは䞡立できるずの芋解を採甚しおいる

ずいうあたりか。

ずはいえ、宮柀議員が指摘する点民定憲法の建前ず、倩皇や貎族院の関䞎が矛盟するぞの政府偎なりの回答をしなければなりたせん。
それが次の郚分。

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〇囜務倧臣金森埳次郎君   唯さう臎したするず、曩に宮沢君の鋭く埡質疑になりたしたやうに「ポツダム」宣蚀に䟝れば貎族院の議決も芁らないし、又倩皇の埡裁可も芁らないし、遡぀おは倩皇が議案を提出を呜ぜられるず云ふこずそれ自身にも問題が生ずるではないか、斯う云ふ疑が起るのでありたす、䜵し私は斯う云ふ色々な解釈䞊倚少疑惑を生じたする事項は囜内問題ず囜際問題ずの調和を図りたす堎合には埀々にしお起るのでありたしお、之を䞀貫せる原理的な解釈方法はないものず思぀お居りたす、詰り歀の二぀の盞異る芁請を若しも個々の堎合に正圓に満足せしめ埗る方法があるならば、其の方法に䟝るべきものず思぀お居る蚳でありたす、
―――――

明治憲法の改正手続きず「ポツダム宣蚀」の履行ずの間には、憲法解釈䞊は「倚少疑惑」を生ずるが、「囜内問題ず囜際問題ずの調和」をはかる堎合にはある皋床の割り切り、珟実的な察応はやむを埗ないずいったニュアンスでしょうか。

いよいよ次が金森答匁の最埌です。

―――――
〇囜務倧臣金森埳次郎君   そこで「ポツダム」宣蚀は囜民の自由なる意思決定に䟝るず云ふこずを条件ずしお居りたす、䜵し憲法䞃十䞉条に䟝りたするず改正手続に斌おは其の他に、倩皇の案の埡提出、貎族院の議決、倩皇の裁可、歀の䞉぀の手続が其の䞊に加぀お居る蚳おありたす、埓぀お物が順調に運びたすれば、憲法䞃十䞉条に䟝りたしお執る手続は、同時に「ポツダム」宣蚀の芁請を充すに足るものず考ぞお居りたす、䜵し物が順調に行かなければ或は「ポツダム」宣蚀の芁請を完党に実珟するこずの出来ない砎目に陥らないずは断蚀出来たせぬ、䜵し囜家の動きの䞊に斌きたしお、容易に斯かる懞念を持぀必芁は生じなからう、斯う信じお居る次第でございたす
―――――

「ポツダム宣蚀」で条件ずされおいる囜民の自由な意思決定のほかに、明治憲法第73条により必芁ずなる぀の手続き、すなわち、

①倩皇の勅呜による憲法改正案の議䌚提出
②貎族院の議決
③倩皇の裁可

が付加されるこずになるのだが、"物事が順調に運ぶ堎合"は「ポツダム宣蚀」の芁請を充足できる。
もちろん、䞍幞にしお順調ならざる堎合に、囜民の自由意思に基づくずいう「ポツダム宣蚀」の条件を満たせない懞念もなくはないが、実際䞊そういう事態は起こらないだろうず信じおいる。

――以䞊が金森答匁の結論です。


〇党䜓を振り返っお

議䌚論戊ずしお芋た堎合、宮柀議員ず金森囜務倧臣は、意芋が察立しおいたずはいえ、専門家同士らしくお互いの䞻匵を理解しあったうえでのかみ合った議論をされおいる印象です。

あず、連茉の冒頭でも觊れたように、明治憲法から日本囜憲法ぞ、「君䞻䞻暩」から「囜民䞻暩」ぞの転換の䞭で、倩皇の法的地䜍はどのように倉わったのか、きちんず認識を持っおおくこずはやっぱり倧事。
昚幎来の代替わり儀匏やそれぞの報道にしおも、倩皇に぀いお戊前からの「継続性」の面がしきりに匷調され過ぎおいたしたが、少なくずも法的地䜍ずしおは断絶しおいるこずを明確に認識すべきず考えたす。

たた、欜定憲法明治憲法の改正ずしお民定憲法日本囜憲法を制定したこずに぀いお、圓時の憲法孊者からは矛盟を指摘されたわけですが、いたずなっおみるず、囜内法䜓系に則っお日本囜憲法が制定されたずいうこずで、かえっお珟憲法の正圓性を匷化する結果になっおいるような気がしたす。
これもあくたで玠人考えですが

倩皇や皇宀に察しおはこれからも、囜民であるこちら偎が䞻暩者なんだずいう自芚のもずに、象城倩皇に察しお敬意をもっお接しおいきたいなず思いたした。

完

「玢匕」事件簿File.5【玢匕線集は臚時的な仕事ではない】 #囜䌚䌚議録の䜿われ方 その11

「玢匕」事件簿File.5【玢匕線集は臚時的な仕事ではない】   シリヌズ第回 では、1960幎代から囜䌚䌚議録の「総玢匕」が線纂されるようになった埓来の「玢匕」からの拡充が図られたこず、   シリヌズ第10回 では、1970幎代からは囜䌚の業務にもコンピュヌタヌ化の波が抌...