2020/12/15

国会会議録「索引」を実際に使ってみた #国会会議録の使われ方 その5

国会会議録「索引」を実際に使ってみた

 本シリーズの1回目では、

 ・検索システムがなかった時代は、「索引」が国会会議録利用者の頼みだった
 ・「索引」は、発言者別あるいは事項別といった括りで編纂されていた
 ・会議録本文に先立ち、「索引」だけはいち早くデータベース化されていた

 ことを紹介しました。

 現在ではあまり注目される機会のない「索引」ですが、一体どんなものなのか。
 とりあえずはネット上で閲覧できる国会会議録の「索引」を眺め、実際に使みるところから始めます。

 なお各種資料によると、国立国会図書館から「国会会議録総索引」というものが出ていて、この中に発言者索引や事項索引が揃っていたらしいのですが、現在のところ「総索引」はネット公開はされていないようです。

 そこで本稿では、インターネットでも閲覧できる資料として、衆議院のみの「索引」や、特定分野のキーワードのみを収集した事項索引など、部分的・限定的な「索引」を主題として取り扱うことと致します。


発言者別の「索引」

 まず発言者別の索引について。

 「国会会議録検索システム」には院別の「索引」が登録されていて(題名は「第~回国会 衆[参]議院 索引」)、この中に発言者索引も収録されております。
 また同「索引」には、発言者別のみならず、委員会別、議案別などの索引もあり。

 ここではサンプルとして「第136回国会 衆議院 索引」を見てみましょう。(第136回国会は、平成8年=1996年の通常国会)

 

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」

 

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」、傍線は @kokkaipatrol


 本会議編の議員50音順の冒頭に出てくるのは、愛知和男議員です。(同「索引」p.15)
 愛知議員は第136回国会の会期中、本会議で5回発言していることがわかります。

 そのうちの1回目は、
 「国務大臣の演説に対する質疑 2号の十六」
 とありますので、さっそく答え合わせに、検索システムで
 「第136回国会 衆議院 本会議 第2号 平成8年1月24日」の16ページ目
 を開いてみると。

 



〇議長(土井たか子君) 愛知和男さん。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔愛知和男君登壇〕
〇愛知和男君 私は、新進党を代表して、橋本総理に質問をいたします。(後略)


出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」、傍線は @kokkaipatrol


 みごと的中しました!\( 'ω')/ ←当たり前

 かつては国会会議録を紙の冊子で開いていたわけで、あくまでも疑似体験の域を出ませんが、要領としてはおそらくこんな感じで国会会議録を利用していたのではなかろうか。

 

事項別の「索引」

 事項別の「索引」は、現在の検索システムでいえばキーワード検索の源流にあたり、国会会議録ユーザーからの需要は相当に高かったはずです。
 (なお、後出の『国会会議録から見た国立国会図書館』を見ると、昭和40年=1965年の第48回通常国会ころまでは「総索引」の事項索引が作成されていなかった旨の記述があり、裏を返すと事項索引が登場したのはその後だったと推測しております)

 事項別の「索引」がインターネット上で公開されている例は少ないようで、私が発見できたのは次の2例。

 

 (1)99年、会議録検索システム供⽤ 「開かれた国 会」への⻑い道』(毎⽇新聞、2018年10月22日付) 

 記事の冒頭に「総索引」中の1ページが掲げられており、「インセンティブ規制」「インターチェンジ」 「インターネット」の事項を読み取ることができます。
 キャプションによると、
1996年の通常国会(第136国会)を収録した翌97年発行の「国会会議録総索引」から』とった画像なのだそうで、「総索引」を垣間見ることができる貴重な1枚となっております。

 

 (2)『国会会議録から見た国立国会図書館 : 国立国会図書館関係国会会議録索引』(渡辺幸秀、国立国会図書館、1991年)

 国立国会図書館に関する議論が出てくる会議録をピックアップした文献。
 対象が限定されている(委員会のみで本会議は除外、期間は第1回国会~第48回国会まで)とはいえ、「この索引を作成するにあたり,極力会議録の本文すべてに目を通すようつとめた」そうですから、気の遠くなるような労作であります。

 先人の努力に思いを馳せつつ、こちらも実際に試してみよう。

 

出典:国立国会図書館デジタルコレクション、強調と傍線は @kokkaipatrol

 

 冒頭にあるのは、第1回国会(昭和22年=1947年)編で、
 「衆 議運3(22.7.8)/国会附属施設の用地として国有地移管に関する件説明(当館の用地について)/p23/●大池真(衆議院事務総長)」
 そこで検索システムで、
 「第1回国会 衆議院 議院運営委員会 第3号 昭和22年7月8日
 を開いてみる。

 


 

〇淺沼委員長 次に國会附属施設の用地として國有地移管に関する件を議題に供します。案件の内容について事務総長から御説明願います。

〇大池事務総長 これはすでに昨日の協議会で一應御了承願つたのでありますが、今お手許に配付いたしました第二ページに書いてありますように、國会図書館その他附属建物の用地がどうしても必要なわけでありまして、一番最初に私どもが考えております青寫眞のまん中の本議事堂の西側の黄色くなつております所へ、一應議員事務室をつくりたい。こういう予定をしているわけでございまして、(後略)

 

出典:国立国会図書館「国会会議録検索システム」、傍線等は @kokkaipatrol

 

 お目当ての議題があったぞ!\\\\٩( 'ω' )و ////

 若干注意が要るのはページ数。
 これは会議録の1ページ目ではないかという気もするのですが、「p23」というのはおそらく他の委員会議録と続きの通し番号なんでしょうね。紙面の左下欄外に「二三」の漢数字が見えます。

 

 【続く】

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