"議事録は国会審議発展史の基本"
検索システムの登場で利用環境が激変した国会会議録。
とはいえ、会議録利用者の主流が国会議員であるという事情は今も昔も変わっていないはずです。
つまり議員の職務には、
(1)質疑等を通じて新たな会議録を創出する活動
と共に、
(2)会議録ユーザー界の最大手
としての一面もあり、本連載の2~4回目では後者、すなわち「国会会議録を利用する国会議員」の姿を、時代を遡りつつ描き出してみようと思います。
国会会議録の研究は質問準備の基本
まずは質問準備にあたっての国会会議録研究の重要性を確認すべく、時代も思想も全く異なるお三方(共産・上田氏、自民・山谷氏、民主・小西氏)の語録を並べてみることにします。(なるべく極端な人選を心がけましたw)
『国会審議の発展史ということでは、議事録はまさに基本である。たとえば、ある問題を質問しようとすると、それまでの議事録の研究は欠くことができない。国会でどんな状況のとき、どういう質疑があり、政府はどう答弁したか。その後、どんな審議の曲折や前進があったか。それらを調べなければ、「すでにこう答弁しております」でチョンとなってしまうからだ。国民の世論や運動とからみあいながら、それをいろいろな形で反映した長期にわたる審議の積み重ねの上に立って、法律や政策の成立、不成立がきまり、その運用と遂行があり、そして修正や是正、破綻すれば廃止もあって、日本の社会は進んできている。
私も何かの問題を取り上げるとき、いつも関係議事録の研究からはじめるのが常だった。国会での論議の総括からスタートすることが必要だからである。そうしておこなった私たちの質問も、のちにその議事録を研究してくれる国会議員の方々によって、生かされることになるだろう。』
『あの衆議院の二十一時間四十五分の議事録を全部読ませていただきましたけれども、国家公務員制度改革基本法の十二条にあります、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」に関する質問がたくさん出ておりました。』
『では、更に改正法の内容について確認をさせていただきます。(中略)
第一条の四の二号で、児童生徒の生命あるいは身体に被害が生じた場合の一番最後の言葉ですけれども、「緊急の場合に講ずべき措置」の緊急の場合というふうな言葉がありますけれども、本日質疑の機会をいただくに当たって今までの衆参の質疑の議事録を私も目を通させていただいたんですけれども、(後略)』
もっとも、この人は過去の国会審議を全然知らないままお喋りをしているぞとすぐにわかる質疑も古今を問わずけっこうあります。
おまけに近頃は、国会会議録に残る政府答弁意味がわからないとにわかに言い出す残念な内閣が……。
ただ、会議録研究への熱意については共有するところがあったとしても、議員在職期間が1974年~1998年の上田氏と、国会会議録検索システムの運用開始後、2000年代以降に議員活動を開始した山谷、小西の両氏とでは、会議録を利用するにあたっての条件は相当に違っていたという事情も同時に見ておく必要はあるでしょう。
また、気ままな濫読が許される私のような趣味の世界とは違い、国会議員(と、サポートする秘書さん)は質問準備という重責を担って国会会議録を研究するわけで、大変な作業なんだろうなとつねづね想像する次第。本当にお疲れ様です<(_ _)>
【続く】