「索引」事件簿File.1【120年前の誤記載】
本連載ではこれまで、検索システムの運用開始以前は「索引」をもとに国会会議録の利用が行われていたことを述べてきました。
現在では影の薄い存在ですが、「索引」が重要性を保っていた時代には、その作成や利用めぐって数々の事件(これが結構あるんです💧)が惹起していたようなのです。
そのあたりの事情を今後数回にわたって見ていきたいと思います。
帝国議会の「議事速記録索引」
ところで「索引」は、戦後の国会会議録についてだけでなく、戦前の帝国議会「議事速記録」(=両院本会議の速記形式の記録)でも作成されていました。
これら「索引」は、「帝国議会会議録検索システム」にも収録されています。
余談:帝国議会の「索引」は現在でも実用性あり!
「帝国議会会議録検索システム」ですが、戦前分は「索引」がテキスト化されているものの、会議録本文は画像版しか提供されていないのが現状です。そのため「索引」がキーワード検索に準ずる手段となる得る場合があります。
「帝国議会会議録検索システム」を利用の際には、「索引」の活用も念頭に置くと探索の幅が広がるはず。
話題を戻します。
今回はサンプルとして、本連載の第4回で取り上げた第14議会(明治33年=1900年)を用いて、帝国議会「索引」の世界を覗いてみましょう。
貴族院と衆議院とでは、「索引」のレイアウトや項目の分類方法が異なりますが、とりあえず貴族院版(「第14回帝国議会 貴族院議事速記録索引」)はこんなふうです。
出典:国立国会図書館「帝国議会会議録検索システム」 |
件名別、事件類別、発言者別の「索引」が収録されていますが、事項索引はありません。
また、並びがアイウエオ順ではなくイロハ順であることも時代を感じさせます。
そして、連載第4回で取り上げた「明治二十二年法律第三十四号中改正法律案」(決闘罪の処罰を軽減する法案)は、貴族院版「索引」の22ページ目にありました。
出典:国立国会図書館「帝国議会会議録検索システム」、赤線は@kokkaipatrol |
中段の「二、二一」「二、二三」が審議が行われた日付、下段の「六七五」「七二一」などの漢数字がページ数です。
法案の審議経過(この事例でいえば、貴族院で法案が付託されてから否決されるまで)がわかるようになっており、紙ベースで議事速記録を利用するしかなかった時代に貴重なアイテムだったことは疑いないでしょう。
「索引」の編集ミス
一方でやむを得ないことですが、この「索引」には誤記などの編集ミスも紛れ込んでいます。
全体でミスの割合がどの程度なのかはわかりませんが、私が部分的に調べた限りでは誤記が少なくなさそうだという印象を持ちました。
さきほどの「明治二十二年法律第三十四号中改正法律案」にしても、貴族院版は問題ありませんが、衆議院版(「第14回帝国議会 衆議院議事速記録索引」)では5箇所で「明治二十九年~」と年号を誤って記載しています。
シリーズ第4回目でも触れましたが、そもそも衆議院の議事速記録で「明治二十九年~」と誤記されており、これが「索引」のほうにも影響してしまったのではないかと私は推測しています。
しかも、同法案に関する衆議院版「索引」の誤記はそれにとどまるものではなく…。
出典:国立国会図書館「帝国議会会議録検索システム」、傍線は@kokkaipatrol |
①法案名が間違っている(前述の通り)
②「木村格之輔」議員の発言として分類されるべきところ、誤って「木村誓太郎」議員の発言とされている
③「木村格之輔」議員の名前を「格之助」と誤植
かなり派手にミスっていらっしゃる(-ω-;)ウーム
「索引」の編纂、やっぱり大変な作業だったのでしょうね。。。
苦労が偲ばれます(__)
【続く】