2020/12/25

「索引」事件簿File.2【空襲で焼失、再製されず】 #国会会議録の使われ方 その8

「索引」事件簿File.2【空襲で焼失、再製されず】

 帝国議会の「議事速記録索引」は、帝国議会の存続期間中ほぼ全期間を通じて製作され続けていたようです。

 帝国議会会議録検索システムに収録されているのは、

 貴族院 第1議会~第91議会

 衆議院 第2議会~第92議会

 です。

 

「索引」が欠落している会期も

 ただ、第1議会(明治23年=1890年11月29日召集)の衆議院版や、第92議会(最後の帝国議会)の貴族院版が見当たらないことをはじめ、いくつかの欠落も見受けられます。

 「索引」が欠落した原因の特定は難しいものの、何となく理由を推し量ることが可能なケースは多く、

 <第7議会(明治27年=1894年) 貴族院の索引なし>
 日清戦争の最中、広島県にて議会召集。
 会期が4日間しかなく(
10月18日~21日)、両院とも短時間の本会議が3回開催された程度で終わっている。

 <第11議会(明治30年=1897年) 衆議院の索引なし>
 会期2日目(12月25日)にして松方内閣が衆議院を解散し、会期終了。議事がほとんど行われず。
 貴族院の索引も、もっぱら前議会以降の議員の異動が記されている程度。

 といった具合です。

 

「索引」が失われた理由がわかるケース

 そして、「索引」未収録の理由が、検索システム内の別の文書によってはっきり確認できるケースがこれ。

 第86回帝国議会 貴族院 附録(本会議)

 中身はたったの1ページで、全文は次の通り。 

大日本帝国政府
 貴族院議事速記録索引は印刷局が空襲に因る罹災の為原稿焼失し再製されない

 

出典:国立国会図書館「帝国議会会議録検索システム」

 

 第86議会といえば、会期が昭和19(1944)年12月26日~昭和20(1945)年3月25日までの、つまり大戦末期の通常会。

 詳細はわかりませんが、おそらくは「索引」を一度は製作して印刷局へ持ち込んだものの、そこで空襲に遭って原稿が失われてしまい、作り直しもしないことになった――というストーリーを想像させる内容です。

 帝国議会の重要文書といえども無謀な戦争の災禍を免れ得なかったわけで、実に痛ましい出来事というほかありません。


 【続く】

「索引」事件簿File.5【索引編集は臨時的な仕事ではない】 #国会会議録の使われ方 その11

「索引」事件簿File.5【索引編集は臨時的な仕事ではない】   シリーズ第9回 では、1960年代から国会会議録の「総索引」が編纂されるようになった(従来の「索引」からの拡充が図られた)こと、   シリーズ第10回 では、1970年代からは国会の業務にもコンピューター化の波が押...